１．森の誕生

　私たちが住んでいる地球は今から４６億年前に誕生しました。その頃の地球の大気は二酸化炭素と窒素と水蒸気が中心でした。その後６億年が経過した４０億年前に海（原始海洋）が誕生し、それから２億年が経過した３８億年前に最初の生命体、その後３５億年前には光を利用して光合成を行うことができるラン藻（シアノバクテリア）と呼ばれる単細胞生物が誕生しました。ラン藻が誕生してからは地球の環境が大きく変化することになりました。それは、海中や、大気中の二酸化炭素から酸素が作られ、大気中に放出された酸素からオゾン（O3）ができ、それが３０億年の歳月をかけて現在のオゾン層となって、太陽の紫外線から陸地を守ることになり、陸地での生物の生息環境が整えられました。

　いまから５億年前にはコケ植物が、４億５千万年前にはシダ植物が陸上に進出し、陸地の緑化が進行していきました。３億５千万年前にはシダ植物は繁栄し、巨大化して地球に最初の森が誕生したと言われています。この時のシダ植物の堆積物が石炭として現在に残されています。　

   その後、２億９千万年前に裸子植物が誕生しました。裸子植物はシダ植物より水分の取り込み・輸送能力が進化しており、種子は乾燥に強く、遠くに移動できるため生息範囲を広げられるようになりました。

　裸子植物の一群は、光を求めて木の主要成分である「リグニン」という堅牢な有機物で幹や枝を進化させて上へ上へと伸びていきました。やがて、シダ植物の森から移り変わっていきました。その頃、哺乳類が誕生しました。

　１億４千万年前にはより繁殖システムの優れた被子植物が現れました。目立つ花びらや香りで昆虫たちを読んで受粉させたり、種子を果実で覆って動物に食べさせて種子を運ばせたりするなど、昆虫類や哺乳類、鳥類などの動物を上手に活用して生息範囲を広げていき、森の中心的な存在となってきました。また、このことが動物たちも多様化がますます進み、豊かな森の中で繁栄するようになりました。　

　

２．森と人との関わり

　今から５００万年～７００万年前に、類人猿からヒトとチンパンジーに別れたと言われています。その後、幾多の変遷を経て、今の人類の原型は２０万年前に誕生しました。地球上に生物が誕生してから３８億年の歳月が過ぎています。

　動物たちが多様性を持って様々に分化し進化してきたのは森の存在があったからです。植物が進化する過程で動物を利用するようになり、動物も森の恵みを受けながら環境に適応するよう進化し、植物の栄養素や植物から放出される生物活性化物質（≒フィトンチッド）を吸収することで体質改善をしてきました。

　森の持つ様々な成分を、栄養素とし消化器から、また空中に浮遊している成分を呼吸とともに取り入れ、鼻からは香りとして、また皮膚からも吸収することで、人間（動物たち）はそれらの成分を使って最大限生命維持のために体質改善してきたことで、今日に至っていると考えています。

　現在の高度に発達した文明社会は、イギリスの産業革命から考えてもたかだか２５０年しかたっていません。森が誕生してから考えると誤差の範囲も生きていないことになります。それだけ人間の身体は自然対応型に作られてきました。

　私たちの身体は、現在の人工的な景色や、音、香り、味、そして複雑な社会生活に対応できていないため、これらの人工的な刺激がストレスとなって免疫力を低下させ、病気になりやすい体になっています。

　森に行くと、森の自然な刺激が、忘れられていた五感を刺激し活性化させることで、免疫力を向上させ、自然治癒力を回復することで病気になりにくい体を作ることができます。

　また、樹木は光合成で造られたたんぱく質を、木の本体を構成するす主成分のセルロース、ヘミセルロース、リグニンを産生し、微量成分としてテルペン類を産生しますが、このテルペン類が植物生存に大きな役割を果たしています。このテルペン類を生物活性物質（≒フィトンチッド）と呼んでいます。このテルペン類を抽出したのがアロマセラピーで用いられるエッセンシャルオイル（精油）です。そして、各部位を乾燥させて粉末にし、調合して使用しているのが東洋医学で使用している漢方薬になります。

　人と森との関わりは、各国に伝わる伝統医学にも生き続けています。人と森との関わりを知ることで、森が人間の健康に深く関与していることが理解いただけると思っています。

 

この項の参考資料

・「森はなぜ体にいいか」　宮崎良文著　岩波新書

・「やさしいフィトンチッドのはなし」　フィトンチッド普及センター編

・「温泉と健康」　阿岸裕幸著　「岩波新書

・「森が消えれば海も死ぬ」　松永勝彦著　ブルーブックス（講談社）

・京都大学森林生態学研究室ホームページより、「研究紹介・‐森林の誕生とジレンマ‐」

・Seneca21stホームページより、「種ヒト（ホモ・サピエンス）の誕生まで」

・森　洋介のホームページより、「（６）オゾン層の誕生と進化」

・にほんまつ動物病院ホームページより、「地球と生命の誕生と進化」